ひと涼み・うるおい スタイルBOOK
住まいのパフォーマンスで
季節ごとの過ごしやすさが
変わるのです!
住まい - 住まい選び

熱中症というと、屋外にいるときに発症するイメージがありますが、そうとは限りません。室内にいても、熱中症になるケースもあるのです。その意味では、住まいの環境そのものも大事なポイント。実際最新の一戸建てやマンションには、無駄なエネルギーを使わず快適に過ごすための、さまざまな工夫が施されているのです。

池本洋一:1995年上智大学卒業。同年株式会社リクルート入社。住宅情報編集部、ほしいリゾート編集部にて記事を多数制作。広告営業に携わったのち、都心に住む編集長、住宅情報タウンズ編集長、SUUMOマガジン編集長を経て、2011年よりSUUMO編集長。消費者、不動産会社、賃貸オーナー向けの講演、業界新聞での連載、TV、新聞などを通じて住まいのトレンド発信を行う。
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省エネルギー対策等級4の家を選んで
室内の温度管理をしっかりと!人が、人生の中で多くの時間を過ごす、自宅。住まい。その住まいのパフォーマンスで、季節ごとの過ごしやすさというのは、大いに変わってきます。
例えば、最近住宅業界で話題となっている住まいに、「スマートハウス」というのがあります。一般的には以下の4つの特徴が挙げられます。まずは「創エネ」。太陽光発電システムなどを備え、エネルギーを創ることができること。2つめに「蓄エネ」。リチウムイオン電池などを備え、創ったエネルギーを貯めておくことができること。そして3つめが「HEMS(ヘムズ)」。“ホーム・エネルギー・マネジメント・システム”の略ですが、センサーやIT技術を用いてエネルギー管理を行うこと。そして最後に「省エネ」です。
実は最後の「省エネ」がとても大事なんですが、これは端的に言うと「気密性と断熱性の高い家」になります。ところが、気密性能や断熱性能も含めて住宅の性能は、目に見えにくく、住んでみないとわからないものがほとんど。そのために設けられたのが、「住宅性能評価」という制度です。
「住宅性能評価」には耐震等級や耐火等級などさまざまな項目がありますが、熱環境に関連するのが「省エネルギー対策等級」。この等級が“4”となっているものであれば、気密性・断熱性が高く「外気の熱を室内に入れず、エアコンがよく効く家」になります。エアコンがよく効くということは、温度管理が行いやすく、過ごしやすい室内空間を維持できる家ということです。 -
ポイントは風通しと
熱の侵入を防ぐこと!「断熱性」というのは、比較的イメージしやすい住宅性能だと思いますが、「気密性」については、具体的なイメージをしずらいかもしれません。「空気の密閉性」つまりいかに隙間がないかということです。昔は、「すきま風が入るくらいのほうが涼しいんだ」なんて話もありましたが、もちろん現代はそんなことはありません。閉じる時は閉じてエアコンが効く室内であること。そして(窓を)開けたら風が通り抜ける室内であること。つまり、開けた時と閉じた時に、それぞれ最大のパフォーマンスを発揮する住まいがよいわけです。だからこそ、「気密性」が大事になってきます。
最近のマンションは、非常に気密性が高いですね。外出先から帰ってきて、玄関ドアを開けようとしても、なかなか開かないような部屋があるくらいです。そんなマンションでは気密性よりも通気性が問題となります。一般的なマンションの部屋というのは、バルコニー側と廊下側にしか窓がありません。風を通すにはその両方の窓を開けておかなければならない。
ここで問題となるのが、セキュリティやプライバシー。最近では、ルーバーと呼ばれる角度調整ができるブラインドのようなものを窓枠にはめ込んでいるマンションが増えています。そのような工夫が施されているマンションは、住まいの快適性能に配慮したマンションであるといえるでしょう。
また室内への熱の侵入を防ぐ工夫として、窓ガラスへの配慮があります。最近多いのは、「Low-Eガラス」を採用している住まいです。Low-E とは、“Low Emissivity”のことで、日本語にすると「低放射」ということ。ガラス面に金属膜をコーティングすることで、熱を反射させ、遮熱効果を高めたガラスなのです。ほかにも複層ガラス(2枚のガラスが使われている)などを使い、窓からの熱の侵入を防ぐ努力がされているのです。 -
住まいだけじゃなく
街づくりから配慮!ここまで気密性能や断熱性能など、住まいそのものについての話をさせていただきました。最後にお伝えしたいのは、住環境……つまり家と周辺環境の関係についてです。
周囲がコンクリートだらけの住宅と、例えば戸建で木々が植えられた庭があるという環境では、大きな違いがあります。街路樹が多かったり、自然が豊かであったりすれば、温熱環境は変わります。最近では、住戸1戸のことだけを考えるのではなく、街づくりから過ごしやすい温熱環境づくりをはじめるケースが出てきました。
例えば埼玉県越谷市にできた、ある住宅街の場合。まず、街全体の空気……風の流れを調べたそうです。そして、それがより良い流れになるように植樹を行い、最後に配棟計画を立てたそうです。つまり、街全体で風の流れを作り、それが気持ちよく感じられる住まいにしようということ。
このような温熱を考慮した街はまだまだ少ないですが、エネルギーが社会問題化した今、注目度は上がっていくと思います。