ひと涼み・うるおい スタイルBOOK
職場に「おもてなし」の心を。
涼感を演出することが本当のクールビズ。
ただの簡略化はマナー違反なのでご用心!
ビジネス - 夏のビジネスマナー

近年の猛暑や電力事情も相まって、もはやオフィスで常識となった「クールビズ」の概念。とはいえ、その標語をはき違えて簡略化や効率化だけを追求するのは考えもの。本来、礼儀というのは心(=礼)と形(=儀)、両面が揃ってはじめて表されます。ビジネスマンたるもの、夏場を快適に過ごすためのテクニックと礼節を同時にわきまえたふるまいを目指しましょう。

西出ひろ子:ウイズ株式会社代表取締役社長。31歳でマナーの本場・英国へ渡り起業。人を主とする店舗空間プロデュースを行い、顧客満足度NO.1企業を輩出する接客マナーを得意とする。また、NHK大河ドラマ『龍馬伝』をはじめ、数々のドラマ制作においてマナー指導・監修を手がけることでも知られる。
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来客時は五感に訴えるおもてなしを
来客時のマナーの要は、事前に用意をしておくということに尽きます。最近は業務の効率化が進み、応接室でおしぼりを出すような企業もめっきり減ってしまいましたが、うだるような暑さの中、わざわざ来訪してくださった方に礼を尽くすのは当然のこと。できればそこに、五感に訴えかけるおもてなしをプラスしてみましょう。
例えば、通常のおしぼりのほかに、保冷剤を包んだハンドタオルを用意して、額や首などを冷やすのに使っていただく。加えて、おしぼりにユーカリやペパーミントなど清涼感のあるアロマオイルを垂らしておけば、実際の温度以上の爽快感を与えることができます。 また、お茶などの飲み物を入れるグラスは冷蔵庫で冷やしておくのはもちろん、熱中症対策として少量の塩分を含む清涼飲料水を同時に用意しておくのもいいでしょう。さらに、透明な容器に水やガラス玉などを配したインテリアなども、視覚からの涼感の演出に一役買います。
こうしたひと工夫は、節電対策下のオフィスでも実践可能なことばかり。必要なのはあくまで「おもてなしの心」だということを覚えておいてください。 -
訪問時のマナーは「ゆとり」がポイント
夏場の移動で悩まされるのが「汗」。商談先のオフィスを滴る汗で汚すなんてもってのほか、ある程度は仕方ないとはいえ、シャツの汗染みをさらしてしまうのもやはり見苦しいものです。自分が訪問する際には、常に時間的な余裕を持って行動し、外出先のトイレなどを利用して汗をぬぐったり、メイクを直したりといったケアを済ませておきましょう。今や男性もスプレーなどの制汗グッズは必需品ですよ。
ちなみに日本では、ワイシャツの下にランニングシャツなどのインナーを着て汗対策をしてらっしゃる方がいらっしゃいますが……実はこれ、基本的にはマナー違反なんです。本来のワイシャツの役割というのは「スーツ用の下着」。欧米のビジネスマンはみんな肌の上に直接ワイシャツを羽織っています。
では汗対策はどうするのか? 答えは「替えのシャツを用意しておく」。ここで面倒だと感じた方、要注意! マナーというのは、相手に不快な思いをさせないことがポイント。そもそも謝意を伝えるために訪問しているのに、肝心の心がけの部分を簡略化させてしまっては元も子もありません。 -
ファッションはTPOに合わせて
来訪・往訪問わず、夏のビジネスシーンでとりわけ注意していただきたいのがファッションのTPO。いくらクールビズといっても、大事な取引先を前にポロシャツ1枚……なんてことは絶対にないように。最低でもジャケットとネクタイは常に持ち歩いておきましょう。涼しく見せたいのなら、素材や色味でアプローチを。自分が楽をするためのものではなく、相手に涼しさを味わってもらうのが、ビジネス上のマナーにおけるクールビズだと捉えてください。
特に女性の方は足元にも抜かりなく。例えば、夏場に若い女性がよく履いてらっしゃるミュール。あれは元々、泥よけの用途につくられたものなんです。サンダル同様、フォーマルな場には当然NG。通勤時に履く場合は、大事なビジネスチャンスにふさわしい靴も同時に携帯しておきましょう。自分の身だしなみの印象が企業のイメージに直結するということをお忘れなく。
何事にもONとOFFの使い分けが肝心。それがビジネスの場なら尚更のことです。せっかくなら、夏の暑さをただ疎んじるのではなく、むしろ場面ごとに工夫して涼感を演出することを企業一丸となって楽しみ、積極的にイメージアップにつなげてもらいたいですね。